易占いの「卦と象」とは?~「アイゼンハワー当選」「スターリン死亡」を占った小玉呑象の卦と象の読解

易占いの卦

新年を迎え「運勢の暦」「ネットの占い」などで今年の自分の運勢を気に掛けた方も多いことだろう。そんな占いのひとつ易占い易断)」では、占いの「しょう(象徴)」をどのようにして読み解くのだろうか? 

そこで、1952年(昭和27)の米国大統領選挙での占いを例に、米国でも有名な易学家小玉吞象どんしょうの講演録から「卦の読解」を引用する。

呑象は翌1953年1月にはソ連の指導者スターリンの死を予言、スターリンは3月に脳出血で亡くなっている。その時の「占いの卦」の意味も自身が解説しているので紹介する。

小玉吞象は宮崎県日南市飫肥の出身なので、私は宮崎日日新聞連載の「散歩考古学 東京の宮崎」「華族会館での年頭恒例易断で 関東大震災を予言した小玉呑象」を掲載した。

このブログでは、その記事を冒頭に転載して彼の事績を紹介。そのうえで呑象が語った「易とはなにか」「当たるも八卦当たらぬも八卦とは」「易断の卦の意味」について、新聞記事や講演録をおさめた『小玉呑象易断録』で説明していく。

これに関連して、『別冊太陽73号 占いとまじない』(平凡社)の「易占いはどのような原理で、人間や世界の運命が予知されるのであろうか」を紹介して「卦」の理解の手助けとする。

その次に、私が体験取材した「人相占い機」も紹介する。私は「施設やモノの仕組み」を図解する「見ればナットク図鑑」デイリースポーツに連載、そのひとつが「人相占い機ミラーアイズ」で、占いの結果に思い当たる点が多々あったので紹介する。

さらに『週刊大衆』連載「今週のなんでもありコーナー」では、スポーツ新聞各紙の占いとスポーツ選手の勝負結果を比較した「スポーツ新聞運勢占いの当るも八卦を執筆しているので、こちらも合わせて転載する。

米紙も評価した易学家小玉吞象の「占いと足跡」

私は宮崎日日新聞連載「散歩考古学 東京の中の宮崎」に「華族会館 小玉呑象 震災を予言」を掲載している。そこで、これを加筆した単行本『散歩考古学 東京の中の宮崎』宮崎日日新聞社 平成20年(2008)の「霞が関・内幸町界隈 華族会館での年頭恒例易断で 関東大震災を予言した「小玉呑象」で呑象の足跡を紹介する。

小玉吞象
易学家小玉吞象
小玉吞象
『小玉吞象易断録』
小玉吞象
関東大震災予言
小玉吞象
アイゼンハワー当選予言

「易の卦」を「人間社会の森羅万象」に当てはめて判断

『小玉呑象易断録』平館幹象編 呑象会本部 昭和35年(1960)             「易について」 1953年(昭和28)12月23日ハワイ紙  

易について
とは、天体のめぐり、地球のめぐりのことで、易の字を分析すれば日と月が重なった形です。太陽と月がめぐる道の意味で、無形な天地自然の道ということなります、この道が易で、(略)春の次に夏、夏の次に秋、秋の次に冬、冬の次に春、(略)朝の次に昼、昼の次に夜、夜が明ければ又朝と同じことを繰返しています。

人間社会も同じで、死亡し、又新たに人が生まれてきますが、その辿る道は時代の違いによりその働きに多少の違いがあるとはいえ、原則は同じであります。易学では、陰と陽がその根幹をなし、これを現代風にいえば、まあアインシュタインの相対性原理とでもいえるでしょう。

易の卦は八つ、これが四千と九十六に変化いたします、これを人間社会の森羅万象に当てはめて判断をするのです。

易は占者に「象徴としての答え」を啓示 占者は「象徴を自己と現実にひきつけ読解」

『別冊太陽73号占いとまじない」』(1991年5月 平凡社)の「易占い」(三浦國雄)は、「易占いはどのような原理で、人間や世界の運命が予知されるのであろうか」と題して、「易占い」を詳細に解説している。

その中に、「易は易者に象徴としてしか答えを啓示しない」という興味深い一文があり、易占いの卦の読解法を理解する一助になるので、易の卦を構成する横画「こう「八」「六十四卦について」を引用する。  

【経と伝】

について説明しておくと、卦を構成している個々の棒こうと呼ぶ。爻には二種類しかない。陽・剛のシンボル、陰・柔のシンボル。かりに陽爻を1、陰爻を0と置けば、易は二進法のシステムとして六十四卦の数値が可能となる。

なお、占って出た卦を一爻ごとに表示してゆく算木さんぎ(六本の小さな角材)は、このニ爻を模したもの。

【八卦について】

この陰陽二爻を二本組み合わせると八通りのパターンができる。これがいわゆるで、易のシステムを構成する重要な単位である。(略)

【六十四卦について】

このこう八卦同士を組み合わせて六爻とすると、六十四種類のパターンができる。これが易の最終レベルである六十四である。                                                        占いもこの六十四種のパターンによって行うが、占断の辞は六十四卦だけでなく各卦の個々のこうにも付される

幹としての前者を卦辞かじ、枝葉としての後者を爻辞こうじと呼ぶが、爻辞は六十四×六の合計三百八十四通りもあることになる。                                         しかし、現実の方はもっと多様多彩であって、三百八十四程度では占者の複雑多岐な現実にとても対応しきれない。

それに、旅のことを占って旅の

卦

が出るというふうに、常に占問のテーマに沿った卦が出るとは限らない

この隘路あいろを開くのがしょうという考え方である。つまり、は占者に象=象徴としてしか答えを啓示しないその象をいかに自己および現実に引きつけて読み解くか、その時占者の力量が問われるのである。

誤解されている「当たるも八卦当たらぬも八卦」の意味

『小玉呑象易断録』平館幹象編 呑象会本部 昭和35年(1960)              「当るも八卦当たらぬも八卦とは」 1955年(昭和30)4月30日羅府新報(米国ロサンゼルスの日本語新聞) 

当るも当らぬも八卦とは…

当るも八卦当らぬも八卦と云う言葉が(略)、褒めた意味かけなしたわけか良く判らないので、(略)多くの人々は「当たるも八卦」と冷やかし半分に言い放つのが例です。

其の出所に一言申しますれば、易の天地人三才の内、天道と地道とは大自然であってこれは人力を以て如何ともすることは出来ない(略)が、只人事の占いに至っては混然繁乱紆余曲折で、占いを頼む人の十中八九までは凶運の時で 其の凶を避け吉に赴かしめんとするのが易道の本旨である立場から、其の凶に陥らざるよう教えさとし

夫れを堅く守った結果 幸に凶運を免れ得たとすれば 占ってもらった易は当たらなかったと云うことにはなるが、併しその当たらなかったのが所謂人助けとなり、易道なるものの本旨がソコにあることが明らかにされる訳です。

此の意味を深く考えて、今から百五十年前の吉川祐三といえる易占いの大先生が縮語して「当るも八卦」と云い出されたのが、いつとはなく今時の様に誤解されてきたのです。

そこで当るも八卦とは、凶と出た易がよく当っていると云う意味で、当らぬも八卦とは、指示された教えに従って幸いにその凶を免れ得て凶になるべき易が当らなかったと云う所に盡きる言葉です。

吞象が解説した米大統領選挙易占いの「卦」の意味

『小玉呑象易断録』平館幹象編 呑象会本部 昭和35年(1960)                         何れが勝つか大統領選挙の易断」 今橋クラブ 昭和27年(1952)8月号            

昭和27年(1952)小玉吞象は、同年に行われるアメリカ大統領選挙を占い、アドレー・スティーブンソン候補(イリノイ州知事)の民主党ドワイト・D・アイゼンハワー候補(将軍)の共和党について易を立て、その時の「」を次のように読解、東京北ロータリークラブでの講演で卦の意味を説明している。

激戦が伝えられる大統領選挙だったが、アイゼンハワーが一般投票で史上最大の3390万票を獲得。20年ぶりに共和党の大統領が誕生した。

選挙戦と易断

民主党の運勢

卦

この「人口まどかならざる相」で、争いは親しいところからおき、はじめは親密だが、後に割れて争うといった分裂危機の易であります。

共和党の運勢

卦

「沢」天にのぼる勢で、非常に速いことを表している。たとえば竹の口をひきさくように激しい勢いで、バリバリと別れていくです。沢天かい」は低いところのものが、非常に人気をうけて上にかつぎあげられる。のしあげられるといったことを表しておる。(略)

以上で両党の運勢は明かとなりましたが、これだけではどちらが勝つか不明です。

そこで、こんどは最後の勝利は何れに在るかという点にふれてまいります。(略)民主党に出た「天水訟」天と水と争い分かれて行く象、即ちまとまらずの相であり、共和党は、低きから高きに移る隆運の相であります。

どちらが勝つか

さて勝敗の鍵はどちらに渡されるでせう? でははこれです。

卦

こんなことはない。民主党と共和党と同じ卦が出たわけではないと思って、二度たてましたが、やはり同じように「山天大畜」の易がでました。この易からしますと共和党が勝つとしてもほんの僅かの差でありましょう。

易からしますと、民主党の方が大いに蓄えて一寸勝味がありそうですが さきほど申しましたとおり「人口まどからならざる相」で、最後に至って割れやすい。これに反して共和党の方は団結強く、いままでの運勢を一挙に挽回せんと気構えております。十六年間もの永い間、民主党の天下がつづいた今日、どうしても今度は共和党から大統領をという気持は相当強いように思います。

呑象「スターリンの死」占い時の「象の啓示と読解」

『小玉呑象易断録』平館幹象編 呑象会本部 昭和35年(1960)                             「易について」ハワイ紙 昭和28年(1953)12月23日 

小玉呑象は毎年正月に、話題になりそうな世界の問題を選んで易を立て、その発表会を開催。昭和28年1月には東京の日本工業倶楽部と交詢社で、ソ連(現・ロシア)の独裁的指導者スターリンの死を予言した。スターリンは3月に脳出血で死去、ソ連は集団指導体制の原則を再確認している。

呑象はこの占い際の「象(象徴)の啓示とその読解」について、ハワイ紙で次のように解説している。      スターリンの一九五三年運勢を占いましたところ  
鳥 その巣を焼くの象  
家禄分譲の意                                    と出ました。鳥その巣を焼くとはを意味し、家禄分譲とは、独裁国家から子分どもが集って評議して政治を行う、即ち或る程度合議制的な国になることを意味します。そのように財界人の集まりで予言したところ皆が本気にしませんでした。

【小玉呑象の人相改善のすすめ】                                            ところで、小玉吞象は「人相の吉相」についても次のように語っている。
耳たぶが大きく開いているのは聡明にして福寿の相である、皆さん朝夕耳をこうして引張りなさい人相は直るものです」(『小玉呑象易断録』「形勢を自ら逆転させよー小玉吞象先生の教訓ー」川添隆行)

そこで、次に心理研究家・浅野八郎監修人相占い機「ミラーアイズ」図解で紹介する。

【図解】浅野八郎監修の人相占い機「ミラーアイズ」

デイリースポーツ連載「見ればナットク図鑑」 平成10年(1998)4月1日

人相占い機ミラーアイズ
人相占い機ミラーアイズ

【取材メモ】買い物に利用していたJR中央線国分寺駅ビル「エル」に設置の人相占い機「ミラーアイズ」。好奇心を刺激されて試してみたら、「運勢結果」に思い当たる点があり、「これは!♪」と取材を即断。メーカーの高田工業所の担当者に駅ビルの占い機で説明をうけて図解化した。       
「ミラーアイズ」開発担当者の論文はこちらから。CiNii 論文 –  人相占いの自動化 – 画像処理による人相占い機「ミラーアイズ」

スポーツ新聞各紙を比較「運勢占い」の当たり外れ

『週刊大衆』連載「今週のなんでもありコーナー」昭和62年(1987)10月19日号「スポーツ新聞運勢占いの食い違い」

「各紙まちまちの運勢内容」「運勢とその結果が明白な勝負ごと」を例に、「その日の運勢占いとその結果の当たり外れ」を比較してみた。

スポーツ新聞運勢占い
スポーツ占い
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相撲占い
スポーツ新聞運勢占い
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